今回は、江波で揚げカスを資源化するエコリオステーション熊谷を訪問しました。本日は株式会社熊谷清掃社 取締役本部長の猪野さんと工場長の遠山さんにお話を伺いました。
━ まずは、熊谷清掃社全体の事業内容などを教えてください。
当社は昭和40年4月に設立し、し尿の汲み取りを主な事業内容としてスタートしました。そこから業務拡大に当たり、平成26年から「えこ☆ウエスト」を本格稼働させ、食品リサイクルにも力を入れています。食品工場等から排出される動物性残さを効率よく分解処理し、木のチップの中で発酵させることにより堆肥を作っています。そのことにより、食品リサイクルループを作り、地産地消に必要である循環型社会の形成に貢献しています。
また、農家さんから依頼があれば、堆肥の散布までお手伝いしています。「えこ☆ウエスト」の開始から15年ほど経過しており、地域に根付いた活動ができていると思います。
━ 今回、稼働した「エコリオステーション熊谷」は環境に配慮した施設ですが、今回、導入しようとしたきっかけを教えてください。
環境対策のほか、現在の燃料高騰の対策の一つとして、「揚げカス」に注目しました。今までは捨てられていた「揚げカス」を何か活用する方法はないかと数年かけて検討してきました。今まで捨てられていたものを絞って精製して再利用できる手法がないか、研究し業者と調整した結果、今回の「エコリオステーション熊谷」の事業開始のきっかけとなりました。
天ぷら屋や都内の店舗を始め、様々な飲食店、チェーン店にプレス機を貸したり、売ったりし、再生油と搾りカスを飲食店で作ってもらい、再生油はそのまま店舗などで使用してもらい、搾りカスを当社で仕入れて活用しています。
後ほど、作業工程を確認してもらいますが、仕入れた搾りカスを更に20tの力で圧縮し、「油」と「カス」に分け、油はボイラーなどの燃料や航空機燃料に、絞りカスは鳥の飼料やバイオコークスなどとして活用することで、捨てる部分がないことが当事業の特長です。
【プレス機:貸出用】
━ この事業を実施するにあたり、大変なことはありますか。
どのくらいの力で圧をかければいいのか調整する必要があり、試行錯誤を重ねながら繰り返し調整しているため、現在も苦慮している点があります。また、鳥の飼料の油分の配分量やバイオコークスを製作する場合の油分などには違いがあり、それに応じた搾り方を調整する必要があるため、日々試行錯誤を繰り返しています。
このような事業を現在実施しているところは少なく、当社の役割・責任として色々と研究・調整・試行錯誤をしています。
━ 絞る作業を行うに当たり、季節や製品によって力の加え方に違いはありますか。
季節でいうと夏は気温が高いため搾りやすいが逆に冬の寒い時期には機械の温度を上げて対応するようにしています。また、絞る回数を季節によって変化させています。商品のゴール(完成)は一緒であるため、その都度検討を繰り返しています。
温度管理はスクリューの温度を上げて調整するようにしています。
━ 揚げカスのうち、使用できないものはありますか。
揚げカスは腐らないことが特徴であるため、基本的には使用できないものはありません。ただし、ラード系のカスなどは使用することが難しいため、仕入れる段階で確認しています。今後の課題としては、ラード系が配分されている揚げカスの対応を今後は検討していく必要があると考えています。
━ それでは、工場内の作業工程を教えてください。
① 店舗などから回収してきた搾りカスを更に20tの力で絞る作業を行います。ドラム缶で回収してきた搾りカスについては、フォークリフトで持ち上げて搬入口に投入するため比較的力は使いませんが、ボックスタイプで回収してきた場合には、人力で投入する必要があるため、重労働となる場合もあります。
※ 20tの力で絞ることにより、油とカスに分離していきます。その後管を通り、搾りカスのルート、油のルートにそれぞれ分かれていきます。
② 【搾りカス】について絞られた後のカスが次の機械へ運ばれていきます。
こちらのふるい機に運ばれた搾りカスをふるいにかけ、細かいカスと粗いカスに分けています。ふるい機の中で回しながら、ふるいの差でそれぞれのドラム缶に落ちていく形を取っています。粗いカスについては、必要に応じて再度ふるいにかけるなどし、全て活用することで捨てるものがないのが特長となっています。
鳥の飼料になるものやバイオコークスになるものなど用途によってカスの粗さが異なってくるため、その点の配慮が必要となっています。
【ふるい機】
※こちらが回転することで、粗いカス・細かいカスに分けています。
※ ドラム缶ごとに、細かいカスと粗めのカスに分けています。
③ 分別されたカスをまとめて業者が回収するため移動させます。搾りカスは100t程度の量となったら業者が引き取ることになっているため、工場内の搾りカスが多くなっています。
※ 搾りカスと油の比率は、6:4から7:3の割合で絞りカスが多くなっています。
④ 【油】について絞られた後、油は管を通り次の機械へ移動させます。
移動させた後、ふるいにかけていき、サラサラな油を生成しています。沈殿するとカスが出るため、更にふるってサラサラな状態へとしていきます。
⑤ サラサラとなった油をまとめて業者が回収するため移動させます。再生油は10t程度の量となったら業者が引き取ることになっています。
※ 店舗などから回収された搾りカスがこのようにサラサラな油へと精製されます。
※ 業者に回収されるまで、保管・管理をしています。
━ 見学させていただき、ありがとうございました。
今回見学させていただいた油や搾りカスなどはどのように活用されていくのでしょうか。
鳥の飼料や航空機の燃料、バイオコークスなどに活用されていきます。航空機燃料については、今後2030年までに燃料使用量の10%を持続可能な航空機燃料(SAF:Sustainable Aviation Fuel)の活用を目標に進めており、今後更なる需要が期待されています。
━ 店や工場から排出される天ぷらかすなどがリサイクルされ、再生油や飼料として活用されるのは、大変すばらしい試みだと思います。
今後の事業拡大も含め展望があれば教えてください。
敷地の空いているスペースでは、蓄電モーターの設置も検討していきたいと考えています。災害時には、近隣住民への電力供給なども検討しています。また、工場内のスペースもあるため、新たな機械の導入も含め、検討したいと考えています。
現在は、油や飼料となる搾りカスを業者へ卸していますが、バイオコークスの製品化など当社内でできるようなことがあれば対応していきたいと考えています。
━ 本日は、ありがとうございました。
【参考】